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エピローグ
「どうした。反抗期のビーナスが吾輩に礼なんか言って。真夏に雪でも降るぞ」
魔王は照れたように笑みを浮かべ、夕闇の迫る空を見上げた。手の平で雪を受けるような仕草をした。
「ああァ、そうだねえェ……」
ビーナスも肩をすくめ照れ笑いをした。
「それに吾輩はビーナスのためにヒッキーを助けたワケじゃないからな」
「ああァわかったよ。ほらァ手を貸してよ」
ビーナスは滑り台を降りきると座ったまま手を差し伸べた。
「どうした。今日は吾輩に甘えて」
魔王は手を握りビーナスを引き起こした。
「フフッ、たまにはな。さァ帰ろうか。お父さん」
彼女は魔王の手をギュッと握りしめて繋いだ。
「フフゥン、珍しいな。絶賛、反抗期のビーナスと手を繋いで帰るなんて。何年ぶりかな」
「さァねえェ。忘れるくらい昔だろう」
ふたりは手を繋いで家路へ向かった。
夕闇がふたりを包んでいた。
二人の背中に、ひぐらしのなく声が響いてきた。
THE END
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