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実さんに付き添って私も一緒に病院に行った。そしてそこで告げられたのはーーー。
「若年性アルツハイマーですね」
現代の医療でも治せない病気だ。進行をただ遅らせることしかできない。いずれ、実さんは私を忘れる。思い出を全部……。
「ごめんね、塔子さん」
病院からの帰り道、実さんは何も言えない私に謝った。これは誰も悪くない。だからこそ、行き場のない悲しみがただ辛かった。私の頰を涙が伝う。
「実さんは何も悪くない!」
「塔子さん。僕が全部忘れてしまって、塔子さんを傷付けることがあったら、その時は僕を迷わず施設に入れて」
「そんなことできない。結婚した時、約束したじゃない!絶対に一緒にいるから!だから、そんなこと言わないで」
実さんが私を忘れても絶対に離れない。悲しいけど、寂しいけど、これは逃れようのない運命。それに逆らうことはできなくても、共にその運命を受け止めることならきっとできる。
私は涙を拭い、実さんの手を強く繋いだ。
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