並木道〜病める時も、健やかなる時も、あなたと〜

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入社して約一ヶ月が経った頃、私は仕事で大きなミスをしてしまった。多くの先輩や上司に迷惑をかけてしまい、二十時半過ぎにようやく会社を出られたものの、私の心は沈んでしまっていた。 同じ時期に入社した同期たちは、小さなミスはあれど順調に仕事をこなしている。こんな大きなミスをしてしまった私はもう会社での居場所はないのでは、そんな考えが頭を支配していく。 「ッ!」 気が付けば泣いていた。子どもの頃ですらこんなに泣いたことはないのに。嗚咽を漏らしながら歩いた。その時、耳に普段聞き慣れない音が聞こえてきた。 「何、この音……」 何かの楽器の音がすっかり葉桜になった桜並木のある道から聞こえてくる。この道は会社の行き帰りで目にすることはあったものの、一度も通ったことがなかった。 私は気になってしまい、音のする方に歩いて行く。楽器が奏でている音楽は全く知らない曲だ。多分、クラシックと呼ばれているものなのだろう。 音のする場所に辿り着いた私は、その場で足を止める。涙が引っ込んでいくのがわかった。
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