並木道〜病める時も、健やかなる時も、あなたと〜

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「実さん、この曲はどんな曲なの?」 演奏を実さんが終えた後、私は訊ねる。実さんは水筒に入れられたお茶を飲んだ後、少し恥ずかしそうに答えた。 「この曲は、エルガーの愛の挨拶と言います。この曲は、エルガーが奥さんとの婚約記念に贈った曲なんです。二人は宗教の違いや身分の違いから互いの両親に結婚を反対されていました。でも、二人は愛を貫いて結婚したんです」 「とてもロマンチックな曲ですね」 フルートの音がいつもよりずっと優しく、今も頭の中に流れている。だけど、それと同時に実さんの好きな人は誰なのか気になってしまった。 「実さんは、誰か好きな人がいるんですか?」 そう訊ねると実さんは耳まで赤く染めて、数秒間声にならない声を発していた。急にどうしたのか訊ねようとした刹那、実さんの口が私の耳に近付く。 「あなたですよ。僕の好きな人は、この曲をいつでも演奏したいと思うのは、あなたです」 その言葉が、泣きたいほど嬉しかった。心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うほど苦しくなって、それでも実さんに伝えたくて、私は彼を抱き締める。
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