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土曜の夜、そして
土曜の夜が来た。
レイナは、支配人に早上がりを頼み込む。
支配人は、レイナの押しに負けて、22:00までの勤務を許した。
22:30レイナはお店の裏口を開けると外に出た。
夜空を見上げると、星がキラキラと光っている
のが見える。
レイナは微笑むと店の前から駆け出した。
駅前に停まっている1台の車。
助手席側の窓をコンコンと叩く音がした。
運転席に座っている仁がそれに気づくと、
助手席のドアを開けた。すぐにシートに
座ったレイナ。
レイナを乗せた仁が運転する車は夜の道を走り出した。
「ここだよ」と車が停まった。
レイナが助手席の窓から上を見上げると、
「マンション?」と少し驚くレイナ。
「そう、ここの7階が俺の部屋」
「凄いね。あなたって、もしかして
金持ち? 」
とレイナが聞いた。
「違うよ、親が所有してた部屋に
住んでるだけ」
「じゃあ、親が金持ちなんだ」
「まあ、どうでもいいじゃん。行こう」
と言うと、車は駐車場に入って行った。
EVで7階の仁の部屋に到着する二人。
「どうぞ」とレイナは仁に案内され
部屋の中に入る。
部屋の中は、以外にも殺風景だった。
しかし、仁が『星が大好き』というのは、
壁に飾られた『夜空 惑星』の写真が物語っていた。
「凄いね! ここ、研究室みたい」
と驚くレイナ。
「大袈裟だよ」と仁が笑った。
「あれは何? 」レイナが部屋の隅に
置いてあるものを指差した。
「あれは、高性能の天体望遠鏡」
「刑事ドラマの時にでてくるやつ? 」
「ちがいます。純粋に星を観察する道具です」
と言うと、仁は天体望遠鏡をバルコニーに出し
レンズのピントを合わせだした。
「レイナちゃん、こっち来て、覗いて見て」
と仁が手招きをする。
レイナもバルコニーに出て、望遠鏡のレンズを
覗き込んだ。
「すごい。何これ。綺麗」とレイナが驚く。
夜空に広がる無数の星、
そこから放たれる光。
「何億光年離れた惑星から放たれる光が
今夜の地球に到達するんだ。凄いよね」と仁が言った。
二人は、暫くの間バルコニーで天体観測を楽しんだ。
夜も更けて来た頃、
「少し、冷えて来たね。そろそろ中に
入ろうか? 」
と仁が言った。
レイナは静かに頷いた。
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