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陽のあたる公園
今日は、日曜日、仁は久しぶりに早起きをすると、溜まった洗濯物を片付け、少し遅めの朝食を求め外出する。
カフェでテイクアウトのサンドウィッチとアイスコーヒーを購入し、近くにある森林公園に歩いて行く。
仁が住んでいる地域は、自然豊かな街で有名である空気も澄んでおり、言うまでもなく自然を生かした公園が数多く点在する。
公園のベンチに腰掛けると、サンドイッチをほうばる仁。
柔らかい陽射しが心地よく、
仁は、アイスコーヒーを飲みながら、
公園内の様子を見ていた。
すると、親子連れらしき二人がボールで遊んでいるのが見えた。
仁は、暫くその母子を見ていた。
男の子が投げたボールが転がり、仁の足元
まで転がって来た。
母親らしき女性が、仁に向かってボールを
取りに走って来た。
「すみません」と女性が言った。
仁は、ゆっくりと足元のボールを拾い上げると女性に渡す。
「はい、どうぞ。 あっ、君は」
仁は女性を見て驚いた。ボールを拾いに来た女性は社員旅行で『夜の社会科見学』の時に行った店のレイナちゃんだったのだ。
薄化粧の彼女は、長袖シャツにGパンにスニーカーを履き、長いサラサラの黒髪は後ろで結び、清楚感が漂い、太陽の陽射しがとても良く似合う。あの夜の彼女とは全く別人だった。
「あっ、すみません、ありがとう」と言うと
彼女は仁からボールを受け取り男の子が待つ場所に戻って行った。
仁は、ベンチから立ち上がると、彼女と男の子の所へゆっくりと歩き出した。
仁が近づいていることに気が付いた彼女、
「どうしたの? 」と仁に聞いた。
仁は、彼女の横にいた男の子に
「僕も一緒にいいかな? ボールで遊ぶの」
と言った。
男の子は嬉しそうに「うん いいよ」と言った。
仁と、彼女と男の子は暫くの間、
ボールを蹴ったり、投げたりして遊ぶ三人、
陽射しの下ではしゃいでいる彼女の姿、
眩しいくらいに綺麗だった。
ベンチに座る仁と彼女、
「家、この辺なの?」と仁が彼女に聞いた。
「ううん、違うよ、今日はたまたま
こっちに遊びに来てて」
彼女の住んでいるアパートは、この公園から
車で30分位のところだと説明を受けた仁、
それ以上は互いのことは語らなかったふたり。
「楽しかった。ありがとう」
と彼女と男の子は仁にそう告げると、
公園を去って行った。
仁も、二人の姿を見送ると、
自分のマンションに向かって
歩いて行った。
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