夜の顔

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「痛いな~もう、腫れてるじゃん」  控室の鏡を見たレイナが言った。 「お前、大丈夫か? 一応、顔は仕事道具なんだから、気をつけろよ、 それに、アイツとは早く手を切れ」支配人の後藤が言った。 「は~い わかりました」と明るく言う彼女。 控室に黒服のスタッフが入って来て、後藤に耳打ちをした。 「えっ? いいのか? それで、まあ、それでいいなら、わかった」と言うと、後藤はレイナに向かって、 「レイナ、指名だぞ。よりにもよって   こんな日に」とぼやく。 「指名って、こんな顔なのに?  ほっぺ腫れてるけど」 とレイナが尋ねた。 「一応、スタッフが事情を話したらしいんだが、それでも、いいそうだ。まあ、好みは、好みそういうのがいい客もいるんだな。 とにかく、その客で今晩は上がっていいぞ。 その顔じゃ数日は無理だからな。 指名客、部屋に案内してるそうだ。 早く行って来い」と後藤が言った。 「後藤支配人、ありがとうございました。  行ってきます」とレイナが言った。 「いらっしゃいませ、ご指名ありがとう ございます。レイナです」 レイナが挨拶をした。 その声を聞いた客がゆっくりと立ち上がり 振り返る。 「あっ、あなた」と驚くレイナ。 レイナを指名した客……それは仁だった。 仁はレイナの頬に手を当てると、 「やっぱり、腫れてる  大丈夫じゃないじゃん」 と優しく微笑んだ。
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