274人が本棚に入れています
本棚に追加
「痛いな~もう、腫れてるじゃん」
控室の鏡を見たレイナが言った。
「お前、大丈夫か? 一応、顔は仕事道具なんだから、気をつけろよ、
それに、アイツとは早く手を切れ」支配人の後藤が言った。
「は~い わかりました」と明るく言う彼女。
控室に黒服のスタッフが入って来て、後藤に耳打ちをした。
「えっ? いいのか? それで、まあ、それでいいなら、わかった」と言うと、後藤はレイナに向かって、
「レイナ、指名だぞ。よりにもよって
こんな日に」とぼやく。
「指名って、こんな顔なのに?
ほっぺ腫れてるけど」
とレイナが尋ねた。
「一応、スタッフが事情を話したらしいんだが、それでも、いいそうだ。まあ、好みは、好みそういうのがいい客もいるんだな。
とにかく、その客で今晩は上がっていいぞ。
その顔じゃ数日は無理だからな。
指名客、部屋に案内してるそうだ。
早く行って来い」と後藤が言った。
「後藤支配人、ありがとうございました。
行ってきます」とレイナが言った。
「いらっしゃいませ、ご指名ありがとう
ございます。レイナです」
レイナが挨拶をした。
その声を聞いた客がゆっくりと立ち上がり
振り返る。
「あっ、あなた」と驚くレイナ。
レイナを指名した客……それは仁だった。
仁はレイナの頬に手を当てると、
「やっぱり、腫れてる
大丈夫じゃないじゃん」
と優しく微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!