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普通のデートがしたかったのさ!
「お待たせ」
「ああ、行こうか」
日曜日、『お礼の約束』をした仁とレイナは、
待ち合わせの場所で落ち合う。
「本当にこんなんでいいの? 」
「いいんだよ。俺、こんなの好きなんだ」
「じゃあ、どうぞ」
彼女は、公園の芝生に座ると、
手作りのお弁当を広げた。
「わ~、すごい! いただきます」と言うと
仁はおにぎりとから揚げを口にした。
「味 どうかな? 」
「超 うまいよ、
レイナちゃん料理上手なんだね」
「何それ、まるで私が料理しない
みたいな言い方」
と彼女が仁の肩を押す。
「なんだよ 痛いよ」と仁が笑う。
お弁当を食べ終わると二人は、
森林公園内を散歩するため歩き出すと、
木々のすき間から木漏れ陽が二人を照らす。
「いい天気」
「ああ、気持ちいいな」
「本当、ありがとうね」
レイナが突然そう言った。
「何が? 」
「だって、私のためかなって思って」
暫く黙った仁が言った。
「だって、君は、薄暗い部屋の中にいるより
太陽の下で、日差しをいっぱいに浴びてる
顔が本当の姿だと思ったからさ」
「そんなこと言われたのはじめてだから、
なんか、嬉しいな」と彼女が言った。
「いくらでも、何度でも言ってあげるよ」
と仁が微笑んだ。
「なんか、もう! どっちがお礼してるのか
わかんないじゃない」と彼女が言った。
「そうだな、でもさ、俺、君とは
普通のデートがしたかったのさ。
わかった? 」
と仁は彼女の鼻の頭をツンと押した。
「なにそれ、でも、ありがとう」
と彼女は嬉しそうに呟いた。
「今日はありがとう楽しかった。じゃあね」
「こちらこそ、ありがとう。
弁当旨かった。じゃあ」
こうして、『レイナは仁へのお礼』を終えた。
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