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将来のこと
仁と怜央は奉遷会事務所に到着する。
事務所内には、父 勇二と新谷そして三浦が
仁と怜央を待っていた。
「親父、どうした?」怜央が勇二に聞いた。
「まぁ、座れ」と勇二は仁と怜央をソファーに
座らせる。
窓ガラスにはネオン街の看板の光が
キラキラと映る。
勇二がゆっくりと二人に話かけた。
「仁、今度、星七さんとかいう女性を
ここに連れて来い」
「何でだよ?」
「そろそろ、お前も先のことを
考えてるんじゃないか?
彼女にも、この世界のことを
知ってもらうことも必要だろ?」
「ああ、それいいんじゃない?」
と怜央が言った。
それを聞いた仁、
「父さん、待ってよ。何だよそれ」
「何って、将来、この奉遷会の跡を継ぐ
男の女房になるってことは、この先色々と覚悟が必要だからな」
「俺、星七をこの裏社会に入れるつもり
ないから」と仁が言った。
「でも、兄貴、彼女……その、以前風俗で働いてたんだろ?
だったら、特に問題ないんじゃないの?」
怜央の言葉を聞いた仁、
「星七、確かに彼女は以前は風俗で働いていた。でも、それは悪い奴らにだまされて仕方なくやってただけで。父さんたちが思ってるような娘じゃない。
純粋で、素直で、真っすぐで、青空の下で生きるのが似合う。そんな女性だ」
「じゃあ、この先兄貴はどうすんだよ?
ずっと今のようなこと続けるのか?
それとも、他に嫁を取って、彼女を一生愛人にでもする気?」
と怜央が言った。
「怜央、おまえ」
仁は怜央の胸ぐらを掴んだ。
「二人ともやめないか」と勇二の低い声が聞こえた。
仁が怜央の胸ぐらから手を離す。
勇二は、仁の前に立つと言った。
「仁、それは俺との約束の『奉遷会を継ぐ』 ことをやめて、惚れた女と一緒になるってことか?」
「父さん、それは」仁が下を向いた。
「仁、お前は、この奉遷会を出て行くと
いうことか?」
その言葉を聞いた怜央、新谷、三浦は
驚き勇二の顔を見た。
「父さん……」と言うと仁は
事務所から飛び出して行った。
「兄貴!」
「仁さん」
怜央と新谷、三浦が仁の後を追おうとする。
「やめろ! 追うな!」
勇二が三人を止める。
「でも、兄貴が……」心配する怜央。
「仁には、少し頭を冷やさせる。
そして、どうするべきかを考えさせる。
だから、放っておけ。お前達もわかったな」
と勇二は三人に言った。
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