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「数日前に彼から突然連絡が来た。
『会いたいと』。私は驚いたが、昔のように
彼を観測所に招き入れた。
二十数年ぶりの彼との再会だった。
互いに年はとってしまったが、
私達はあの頃と変わらず、今までのことを
語り合った。
本当に楽しかったよ。
私は彼に私の所に尋ねて来た理由を聞いた。
彼は、自分の息子が『自分の後を継いで
奉遷会』の若頭になったこと、
命を狙われたこと、そして好きな女性が出来たこと。
息子が大好きな天文学の道を自分が断ってしまったこと。
息子の人生を自分の勝手で狂わせてしまったと。
彼は後悔しているようだったよ。
息子には息子の進べき道がある、
それを決めるのは俺じゃなく、本人だってね」
「平所長……」仁の目に涙が浮かぶ。
「彼からそのことを聞いた私は、
君にこのことを伝えたくて、
君のお父さんの本当の気持ちを」
仁の顔を見た平、
「安藤君。観測所に戻って来い」と言った。
平の言葉を聞いた仁、
「でも、俺は、その、一年前にすでに
退職してますから」
平は微笑むと言った。
「安藤君、君は退職してないんだよ」
「えっ? どういうことですか?」
平の言葉に驚く仁だった。
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