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長い休み明けには
「安藤ちゃ~ん、久しぶり」
先輩が仁に抱きついた。
ここは、天体観測所。
一年ぶりの観測所に足を運んだ仁、
部署のドアを開けた。
そこには、懐かしい光景と、
笑顔の仲間が仁を迎え入れた。
仁が自分の席へゆっくりと歩いていく。
机の上は綺麗に整理整頓されており、
あの時のままPCが置いてあった。
仁は懐かしい思いを胸に席につく。
あの時のように、
キャスター付きの椅子に座る同僚と先輩が
勢いよく仁に近寄って来た。
「安藤、よかったな。俺たちふたり、
物凄く心配してたんだぜ。
身体のほうはいいのか?」
「身体?」と仁が聞き返した。
「だって、俺ら二人、一年前、
お前が病気療養するって所長から
説明を受けてさ。表向きは家庭の事情
ってことなんだよな?
所長から見舞いとかも行くなと言われて。
ごめんな・・」
「いえ、こちらこそだまっていなくなる
格好になってしまってすみませんでした」
「お前、手術したんだろ? 痛かっただろ?
傷口見せてみ・・」
と同僚が言うと、先輩と二人で仁の上着を
まくり上げた。
「ちょっと、
ふたりともやめてくださいよ」
と仁が笑いながら言った。
上着をまくり上げた二人が言った。
「安藤~、痛かっただろ?
脇腹にこんなに長い縫い傷・・」
と涙目になった二人。
仁は慌てると、
「ええ、まあ・・
切られた時は痛かったですけど、
お陰様で完璧に治りましたので、
安心して下さい」と言った。
それを聞いて安心する先輩と同僚、
二人を見る優しい眼差しの仁。
仁が奥の席に視線を送る。
視線の先には仁を温かく見守る 平所長の姿・・
仁と所長、互いに目を合わせると、
クスっと笑った。
こうして、安藤仁は一年ぶりに
天体観測所 研究員として
正式に職場復帰した。
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