引き出しの奥の大切な彼女

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 その日から、私は仲良しグループから外される事になった。中2になると友達は誰一人いなくなり、昼休みも図書館の隅で空気のように過ごした。今まで失った事のなかった自信はあっという間に消え去り、これからの生き方を変えざるを得なかった。正しいと疑わなかった本音を封印し、本当の自分を隠して生きる事を決意する。   「アンタは間違ってたんだよ。もう出てこないで。大人しくしておいて。もうアンタには会わないから」    自信の消えた暗い表情が映った鏡をしまった引き出しの奥。もうその引き出しは開けない、開けたくないと強く思った。    中学時代は捨てて、知り合いがほとんどいない高校で新たな出発。そこにいたのは、別人の私だった。もう友達に否定されたくない。だから、美花が言ったように想像力をフルに活用させる。相手の顔色を伺い、発言する前に綿密なシュミレーション。そうこうしている間に会話のリズムは崩れ、発言の機会を失う。異常なほどまでに人間関係に気を遣ったのに、その努力は虚しく、無口で消極的な、人付き合いの下手な人間が出来上がった。    
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