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Take me in your-arms,again
「ねえ、今年の慰安旅行どうする?」
尋ねてきたのは一応あたし達のリーダー、トモチ
いつもの繁華街のカフェテラス
丸形テーブルのあと3つの席では、旧友どもが旅行のパンフレットを開いてワチャワチャしている
息苦しいのが嫌で、あたしは、あたし達七人はいつも店の外に陣取ることにしている
七人か…もういい加減慣れなきゃ…いや、忘れなきゃならない、8番目のメンバーに思いを馳せる
大体あたし達のグループ、言い出しっぺは今ここにいない8番目のメンバーにして、あたしの恋人
言っておくが「元」ではない!立派に現在進行形の恋だ!
あたしの中では今も誰よりも、家族よりも、ココにいる仲間たちよりも、ずっと大切に思っている
ただ、両親が持ってくるお見合い話や仲間たちの合コン話も全て無視していたので、すっかり行き遅れてしまった…
はあ
あの時海外に行くことを止めたら良かったのかな
あたしとあいつは大学こそ違えど、色んな外国語を学んだ仲だからこそ止められなかったんだけど
あたしは世界の6大公用語と呼ばれる言語を「優秀な」成績で修め、あとはプラス日本語を多少操れる程度だけど
あいつは本人曰く、それにプラスしてヨーロッパの各種言語にアラビア語、そして本分の各種法律を学んでた
因みにあたしは外国語大学、あいつは総合大学の法学部に進んだんだけど
…確かに大学は自分が学びたい事を学ぶ為の学舎だけど、あいつ何が識りたかったんだろう
これは恋人たるあたしにも、未だに理解出来ていない
仲間たちは東北の秘湯や北海道の奥地に涼を求めたいようだ
聞こえてくる地名がさっきから全部そうだ
カラン
目の前のアイスティーの氷が溶けて涼し気な音を立てた
あいつと付き合っているうちに食べ物飲み物の好みまで似てしまった
現に目の前のアイスティーはあいつの好きな銘柄のアールグレイだ
うーん
あたしは大きく伸びをしながら、ビルの谷間から覗く雲ひとつない青空を見上げていた
自然と、あいつが褒めてくれた形の良い胸が強調される事になるが…旧知の仲間達は当然見向きもしてくれない
と、その時閃いた
額の辺りに稲妻が奔ったワケじゃないけど
とあるホテルでの記憶が
「僕は冬生まれなのに寒いのが苦手でしてねぇ、こうして○ちゃんが隣で温めてくれて嬉しいんですよねえ」
その瞬間あたしは仲間たちに向き直り、高らかに宣言していた
今年は思い切って南の島に行くわよ!場所はココしかない!
あたしが指差したのは、日本地図の中でもかなり南に位置する、飛行機を乗り継いだ上で、更に車…レンタカーでしか行けない、とある小島だった
…よしよし、誰からも反対意見は出てこないぞ…って、一瞬ヒロとトオルの顔が引き攣ったように見えたけど、きっとあたしの気の所為だろう!
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