more than thirty-four years ago

1/3
前へ
/59ページ
次へ

more than thirty-four years ago

「えっと、その、大丈夫?」 耳許で少し高めの甘い声がする どうやら少し気を失っていたみたい あたしの視界に飛び込んできたのは見慣れた寝室のモノ ではなく、天井に嵌め込まれた鏡に映る、白いシーツで下半身を覆われたあたしと…○○の背中 ここは所謂「そういう」ホテルだ 生まれて始めて受け入れた、何とも言えないその異物感と気怠い身体に鞭打って、あたしは今謝罪の言葉を言ってきた唇に自分のそれを重ね合わせ さっき生まれてはじめて交わした、お互いの舌を艶めかしく絡め合わせるオトナのキス あの時この気持ちには踏ん切りがついた筈なのに、卒業以来偶然街で見かけたこいつの目を見た瞬間 焼け木杭に火が点く、とはよく言ったもので 気づけばあたしはこいつの手を引いてこのラブホに入っていた 周りからは「恋多き女」「男を取っ替え引っ替え」そう思われているが、悪友♀たちだけはあたしの隠した気持ちを知っている… あたしが「はじめて」を捧げたこいつへの恋心を こいつとあの娘の間に何があったのか?あんなに幸せそうだったこいつに死んだ魚の目をさせた理由 行為の前に全部吐き出させた おかげで今は元の、穏やかで優しい目に戻ってる 「重くないですか?」 2人の唇を唾液が白い糸になって繋いでいる、けど キスから解放してやった途端にそれかよ!全く!こいつはいつもそうだ! いや…こんなだからつけ込まれて騙されて、挙句に捨てられたんだな ん、大丈夫…○○、今も体重掛けないように頑張ってくれてるんでしょ? あたしの顔を挟むように、まるで腕立て伏せするような姿勢でいてくれている
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加