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more than thirty-four years ago
「えっと、その、大丈夫?」
耳許で少し高めの甘い声がする
どうやら少し気を失っていたみたい
あたしの視界に飛び込んできたのは見慣れた寝室のモノ
ではなく、天井に嵌め込まれた鏡に映る、白いシーツで下半身を覆われたあたしと…○○の背中
ここは所謂「そういう」ホテルだ
生まれて始めて受け入れた、何とも言えないその異物感と気怠い身体に鞭打って、あたしは今謝罪の言葉を言ってきた唇に自分のそれを重ね合わせ
さっき生まれてはじめて交わした、お互いの舌を艶めかしく絡め合わせるオトナのキス
あの時この気持ちには踏ん切りがついた筈なのに、卒業以来偶然街で見かけたこいつの目を見た瞬間
焼け木杭に火が点く、とはよく言ったもので
気づけばあたしはこいつの手を引いてこのラブホに入っていた
周りからは「恋多き女」「男を取っ替え引っ替え」そう思われているが、悪友♀たちだけはあたしの隠した気持ちを知っている…
あたしが「はじめて」を捧げたこいつへの恋心を
こいつとあの娘の間に何があったのか?あんなに幸せそうだったこいつに死んだ魚の目をさせた理由
行為の前に全部吐き出させた
おかげで今は元の、穏やかで優しい目に戻ってる
「重くないですか?」
2人の唇を唾液が白い糸になって繋いでいる、けど
キスから解放してやった途端にそれかよ!全く!こいつはいつもそうだ!
いや…こんなだからつけ込まれて騙されて、挙句に捨てられたんだな
ん、大丈夫…○○、今も体重掛けないように頑張ってくれてるんでしょ?
あたしの顔を挟むように、まるで腕立て伏せするような姿勢でいてくれている
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