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だだっ広い道だった。どこまでも果て無く続く一本道だ。
左右には無機質なコンクリートの壁が高く高く聳え立つ。見上げれば天井か空かも判別つかない仄暗い灰色が広がっている。
どこだ?夢か現実かも定かじゃない。僕はどうしてここにいる?
脳内が激しく混乱する。いくら逡巡してみても、ここに居る以前の記憶が見つからない。生温い風が哭いた。壁にぶつかり反響し、言語に聴こえる。
――進め。――進め。
風は確かに僕にそう指示していた。
僕はおぼつかない足取りで歩き出す。歩かなければならない。正体の解らない強迫観念が僕の背中を押していた。
しばらく行くと、道の先に小さな人影が見えた。
子供だ。小学生……おそらく低学年くらいの女の子。少女は道の真ん中にしゃがみ込み、背を丸めて啜り泣いていた。
「どうしたの?」
僕がそう声をかけると、女の子は嗚咽を漏らしながら顔を上げた。
「みんながミカをイジメるの」
ミカ?形を成さない記憶のどこかで、そのありきたりな名前が引っ掛かった。
「イジメられたの?」
「……うん。みんな。ミカはブスだって言って、みんながイジメるの」
ミカと名乗る女の子の顔は涙と鼻水でくしゃくしゃだった。目鼻立ちがはっきりしていて、二重の大きな目をしている。幼いながらも均衡の取れた可愛らしい顔だ。
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