一本道

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 ――進め。――進め。  風が俺の背中を押す。遠くに人影が見える。  俺はどれだけの命を殺めたんだっけか。ぼんやり考える。数え切れない。  俺は確信していた。この先、俺が手にかけた幾人もの相手が待ち受けている。その度に当時の記憶を掘り返し、後悔し、苦しみ、歩くのだ。  どこまでも続く一本道は、亡者に罪を自認させる道だった。道の終わりはもちろん地獄の入り口だ。  赤いワンピースの女がヨタヨタと走ってくる。長い髪を振り回し、半溶の肌を引き摺って――。  あれは確か、俺が焼き殺した女だ。保険金を掛けて、家に火を放ち――。  ああ、そんな怨めしい目で見ないでくれ。もう思い出した、反省した……、だから、もう許してくれ――。
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