会えた彼

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 それから十年がたった。彼は俳優として映画に出演して何と主役を任されるようになった。  映画監督は彼の姿を見てほほえんだ。 「これからはほかの監督の映画にも出られるね」 「そういわずに僕を出演させ続けてください」 「君ならほかの監督とも仕事できるよ」 「そう言わず」 「オレはこれから祖国に帰る」 「海外ですか?」 「君だけに言うが異星だ」 「本当に異星人ですか?」 「君なら大丈夫だ」そこで彼は監督と別れた。  それから三十年たった。達郎は大御所俳優になっていた。  ある日自宅の庭で芝刈りをしていたら、インターフォンが鳴ったらしかった。達郎には聞こえなかったが、妻は彼に声をかけた。達郎は玄関に来てすぐに誰なのかわかった。インターフォンの画面からを見ると監督らしい。 「久しぶり」達郎は言って玄関を開けた。 「また会えたね」監督はほほえんだがまだ若い顔をしていた。監督のほうが年上であったが、なぜか普段鏡に写して見る達郎の顔より若く見える気がした。            (了)
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