会えた彼

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「また会えたね」と彼の長女は声をかけてきた。 「何なんだ」彼は恐怖のあまりか気がつくと笑っていた。  食事中も外では「また会えたね」を連発していた。 「また会えたねとは何だろうな」彼は妻と長女にたずねた。 「また会えたねと私は確かに言ったけど」妻は答えた。 「何万人単位の人々が『また会えたね』と言っているのだ」 「あなたそれは当たり前よ」 「どうして当たり前なんだ」 「この国では皆、また会えたね、と言うということが法で定められたの」 「それは知らなかった」彼は少しあせっていた。 「そんなことも知らないの?」長女に笑われて、彼は複雑な気持ちだった。  彼は恥ずかしいと思った。そんなことに恐怖を感じたことは現代人として問題がある、と彼は考えた。  ずばり恐怖は感じ続けていた。
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