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毎日砂場から顔を出しては、キラキラしたものを集めているカモノハシが「あれいいな~」って自身の目もキラキラさせて、あいりちゃんの髪飾りを眺めていたのを知っている。
一部始終だって目にしていた。あいりちゃんは遊びに夢中になっていて、髪飾りが落ちたことに気づけていなかった。私はカモノハシに取られないように走った。
しかし、すばしっこいアレは嬉しそうに髪飾りを咥えると、土の中に潜って行ってしまったのだ。そう。結果足の遅い私は、間に合わなかったのだ。
あの頃には、こういう不思議な存在が居る事を、あまり人に言ってはいけないと薄々気が付いていた。とは言っても、私は人情がない人間ではない。
だから、あいりちゃんが髪飾りがないと気づいて必死に探し回り、最終的には、大声で泣いている姿を目の前にしたら、動かずにはいられなかった。
例え、みんなが私の事を避けていたとしても――
私は、いつも遅くまでお迎えを待つ居残りっ子だった。実行に移すには最適なポジションの人間だ。
みんなが帰ったら、砂場で遊んでいるふりをして、あのカモノハシに頼んでみよう……初めて、自ら不思議な生き物に接触しようと思った瞬間だった。
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