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夕暮れ時、みんなを見送ると、先生に砂遊びしてくると言ってカモノハシが顔を出す場所まで走った。
自分の大好物である琥珀糖をポッケから取り出し、夕日に照らす。毎日、お母さんが一人で寂しくなったらこれを食べてちょっとだけ待っててねって作ってくれる宝物だ。
これとあいりちゃんの髪飾りを交換してもらおう――
私は大事なキラキラ光る琥珀糖をぽとりと砂場に落とした。次第に地中からごそごそと音が近づいて来るのがわかる。私は息を呑んだ。
心臓がバクバクするさなか、砂がふっくらと盛り上がると、昼にも見た自身もキラキラ発光するカモノハシが私の目の前に現れる。
gufu~!
それは、私が落とした琥珀糖を見るやいなや、とびきり目を輝かせた。気に入ってくれたらしい。私は思い切って声をかける。
「カッ……カモノハシさん……!」
gufa!?
カモノハシは、自分の存在が私に見えていることにびっくりしたのか、少々砂に隠れた。
「まっ待って! お願い。話を聞いて欲しいの」
fafa~?
「あのね? お昼に、あいりちゃんって子が髪飾りを間違って落としちゃったの。私のその琥珀糖をあげるから交換してくれない? あの子がとっても大事にしていたものなの……お願い」
意外なことに私の言葉がわかるのか、カモノハシは頭を抱えて悩んでいる。あいりちゃんのビーズでできたキラキラの髪飾りと、私のお母さんから貰ったキラキラの琥珀糖一粒を天秤にかけているらしい。
「あっ!! 待って!!」
ひとしきり考えるとカモノハシはひと声鳴き、私の琥珀糖も持って砂に潜ってしまった。どっちも取られてしまったと、じわじわ涙が溢れてくる。
やっぱり関わらなければと思った時だった。
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