Don’t Be That way

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 厨房に入った僕は冷蔵庫からサンドイッチの具材を取り出し、まな板の上に並べる。  かつて僕と彼女、そして僕の兄とで作ったサンドイッチのことを思い出す。  当時の僕らはいつだって三人で何かをしていた。高校の授業を抜け出してゲームセンターへ行った時も、初めて煙草を吸ったのも、流行り病に罹ったのさえ三人同時だった。  いつからか僕らは社会人となり、そして次第に連絡を取らなくなっていた。 僕ら自身がそれを選んだというより、それは思いの他早かった社会の時間がそうさせたということなのだと思う。  僕らは時代の奔流にすっかり流され、「三人」という形を見失った。そんなどこにでもあるような関係だった。  サンドイッチの具材はやや飛び出るような形でなんとかパンに収まり、僕はそれをピックで無理やりに固定し、皿に載せた。 それには、かつての「三人」の標本のような情調があり、僕を何とも言えない気持ちにさせた。  過去の匂いをかき消すためにコーヒーを二杯分用意する。その行動が僕の感傷を余計に引き出すことになると気が付いたのは、それらをトレンチに並べた時だった。  この場合において「三つ」が意味するのは過去の僕らだったから。
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