mission〜最終章〜

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それから僕たちは、佐橋を置き去りにして カラオケボックスを出た。 「秋津さん、ありがとうございました」 挨拶もなくすみませんと言葉を続け、 秋津さんに頭を下げると、 「いや、川瀬くんの役に立てて良かった。 彼はうちの職場のエースだからね」 と微笑んでくれた。 「川瀬くん、また明日」 去って行く秋津さんの背中。 見送ってから、川瀬と手を繋いだ。 「ふー。やっぱり、由貴の手がいちばん」 「え。佐橋の手、触ったの」 「あ。ごめん。流れでつい」 「‥‥ムカつくけど、仕方ない」 「由貴こそ、秋津さんの腕に絡んでたよね」 「何言ってんの。あれはただの演出だし」 「やれやれ、お互い様だね。帰るか」 「そうだね、疲れたー」 川瀬が僕に微笑み、僕もそれに応えた。 単調で平凡な日常が輝いて見えるのは 川瀬がそばにいてくれるからだと 強く実感するようになったのは、 いったいいつの頃からだろう。 川瀬の存在で初めて生きる目的を見出した。 どうか未来永劫、川瀬のそばで。 このささやかだが壮大なミッションを 全うできることを願わずにはいられない。 「葵、コンビニでアイス買おうよ」 「はいはい」 川瀬と恋人繋ぎをしながら、 僕はこれ以上ない幸せで満たされていた。
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