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佐橋との待ち合わせは、11時。
繁華街のJ駅の改札前でと伝えていた。
ごはんを食べながらゆっくり話したい、
やっぱりキミの言う通り、
川瀬は僕の手に負えない相手だった。
僕の相談に乗ってくれる?と
そう最初にメッセージを送ったら、
佐橋は一も二もなく飛びついた。
『そうでしたか。僕で良ければ聞きますよ』
佐橋からの返信を見て、
僅かに胸が痛んだのは確かだったが、
次に送られてきたメッセージで
佐橋の本性が見えたような気がした。
『岸野さんに相応しいのは、川瀬じゃない。
それはわかってくれてますよね』
だから僕は少し考えた挙句、こう返信した。
『ああ。言われなくても』
佐橋はそれで僕の本心(偽りだが)を
理解したのだろう。
『早く、岸野さんに会いたいです』
と、明確な意思を表明してきた。
まさか僕の隣にいる川瀬に、
このやり取りを見られているとは知らずに。
「由貴、ごめん」
やっと佐橋とのやり取りが終わり、
深い息を吐いた。
「いいよ、佐橋を罠にかけるためだもん」
「ん。ありがとう」
川瀬を抱き寄せ、目を閉じた。
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