mission〜最終章〜

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「岸野さん」 時間通り、佐橋が待ち合わせ場所に現れた。 「来てくれてありがとう。久しぶりだね」 笑顔を作りながら、佐橋の腕に手を添える。 「こんなこと話せるの、キミくらいで」 「選ばれて光栄です。今日、川瀬は?」 「用があるとかで、出かけたよ」 「今、川瀬と一緒に住んでるんですよね。 そういうことは多いんですか」 「最近は特にね‥‥本当に、何を考えてるのかわからないよ」 もちろんこんなのは大嘘で、川瀬とはいつも 行動を共にしている。 「岸野さん、今日は楽しみましょう」 「‥‥いいのかな、楽しんで」 僕が逡巡している素振りを見せると、 佐橋は僕の手をそっと握って、こう言った。 「僕、岸野さんを笑顔にする自信あります」 それを聞いた瞬間、吹き出すかと思った。 「ホント?じゃあ、今日はよろしく」 空いている手で口元を押さえ、 笑いを堪えながら言葉を繋いだ。 「朝ごはんは食べた?佐橋くんとゆっくり 話したいな」 「食べてないです。お腹空きました。 この近くにパスタの専門店があるんで、 そこに行きませんか」 「いいよ。連れてって」 食事まではしてやる、最初で最後だけど。 食べたら、 川瀬との偶然を装った遭遇が待っている。
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