君をおぼえている

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君をおぼえている

「うたはかなしみを忘れさせるためではなく  かなしみを忘れなくさせるためにある」   君の部屋に向かう電車に揺られながら 思い出しているのは、そんな言葉 いつかもこんなふうに 君は僕を呼んだ 僕はその時もおなじような気分でいた     自分のことなら たぶん我慢する 他人の話なら 気にもしないけど 君のかなしみに 僕は口ごもる 言葉になれない吐息のあいまいさは 嫌になるぐらい 僕たちに似ている     忘れればいいだなんて言えない 思い出したって何も変わりはしないけど 忘れたい言葉も 忘れられない想いも 今は僕が預かってあげるから     僕は詩を書いている それで変わる事なんて 何も無いけれど むしろ都合の良い思い出に変えないために できるだけ正確に輪郭を描いている       君もいつか僕がいらなくなる その時まで僕は君のそばにいる 君を僕がおぼえている 君が忘れたいその瞬間を 君が忘れたい そのいきさつを全て きっと僕がおぼえていてあげる
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