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第一話
東京都千代田区秋葉原。
有名な電気街と『オタクの街』という事で有名だった。
休日には路上でコスプレイヤーのライブ、そしてまたそれを見に来る人や外国人で毎日の様に賑わっている。
正直、この街は嫌いだ。
JR山手線、営団日比谷線、そして近年新しく出来たつくばエクスプレスの接続にて重要な拠点となっており、それに乗じてまた訪れる人間の数も増える。
「マック行きたい。」
つかさはふいに口を開く。
つかさの少し前を歩いていた要は両手に大荷物を持っていたが、聞き逃さずに足を留めて振り返る。
「せやな、ならちょっと休もか。」
つかさが言い出したことではあるが、要も少なからず疲れていたのには違いが無い。つかさの倍の荷物を持っていた要は目元を綻ばせて笑った。
つかさと近藤要は同い年で、要はつかさの兄が経営する探偵事務所の所員だった。
年齢は同様に20歳。しかし早生まれの要はまだ19歳であった。
「要、荷物貸して。」
つかさがそう言って手を差し出すと、要は自らの手荷物を固く握り締め、首を振る。
「アカン!これは俺が持ってくねん!」
「重いでしょ?」
「えぇねん!」
自分の荷物は自分で、という考えは確かに格好良いものなのだろうが、要がいうといまいち凄みに欠ける。
まず第一に二人の身長差があった。
同い年であって、つかさの身長は168cm、それに比べて要の身長は163cmと成人男性にしては若干低かった。
二人が並んで歩けばそれはまさに兄弟のように見えた。
また、天は二物を与えないというべきか、要は一般的に見てかなり端正な顔立ちをしている。
口を開けば関西出身と分かってしまうが、二重がくっきりと描かれた大きな目は思わず魅入ってしまう程であった。
加えてつかさも尋常ではなかった。
明らかに身長から見れば基準をはるかに下回る体重に、夏も近い時期なのに全身を黒のシャツとズホンで包み、病的なほどの肌の白さは今にも倒れるのではないかと周りが心配をするほどだった。
目が太陽に弱いからと言ってかけている茶色いサングラス越しに要を見ると、目線の下に要の姿があった。
「な、なんやねん、見下ろすなやっ!」
「別に、ただ見ただけだろ。」
身長の低さがコンプレックスとなっている要はそれに少しでも関係するものならば過敏に反応した。
一方つかさも要のそれには慣れていたので、敢えてそれ以上刺激することを選ばず、何事も無かったかのように視線を反らす。
「煙草吸えるマックの方がいいなー…」
「なんや、ニコ切れか?貧血か?倒れたら連れて帰られへんのやからしっかりせえよ。」
「知ってる…」
元から口数の多いほうでは無いつかさは、加えて良すぎる天候に眉を潜めた。
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