運命の悪戯

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 警察官がその通話を聞き終わると、再び恵介に振り返った。 「山田さん、さっき言ってたことと随分、食い違う点があるみたいですが…」  山田とは恵介の苗字。少しバツの悪そうにする恵介。録音されている以上、言い逃れはできない。けれど、恵介はとにかく往生際が悪い男だった。 「いやー、その録音は多分こいつが勝手に作ったもんですわ。こいつは、そういう小賢しいことするのが得意なんですわ」 「あんたね、言いがかりも大概にしなさいよ。こんな、あんたのきしょい声なんてどうやって作るのよ? 逆に教えて欲しいわ!」  そう紗綾が反論する。と、一人の警察官がすかさず(なだ)めに入った。 「まあまあ、落ち着いてください。私たちはこの山田さんに当選した宝くじを盗まれたと聞いたもんで、こちらに伺ったのですが……どうも違うようですので、これで失礼しようかと思います。警察は民事不介入ですので。──今後はお互いよく話し合って解決してください。ただ、暴力沙汰や無理やり奪ったりなんかは絶対にやめてくださいね」  一人の警察官は恵介と紗綾に向かって話す。特に恵介には念入りに二度三度、(さと)すように告げた。  そして恵介は、警察官に説得されたこともあり紗綾のマンションから離れざる得なかった。  ほっと安心し肩を落とす紗綾。そういえば、2等ってあったんだと今更ながらに気づいたようだ。因みに10の数字のうち(ここの)つ当たれば2等となる。その当選額は7億円。恵介が血相を変えて奪いに来ようとするのも納得ができた。
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