運命の悪戯

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 そんなパラダイスのような思いを巡らせるなか、紗綾はふと不安に思うことがあった。 (今日は、どこで寝よう?)  本来なら50億もの現金を換金できる当たりくじを持っているのだから、どこかのセキュリティの良いホテルにでも泊まりたかった。でも今はお金がない。宝くじを換金するまでは…  ネットで調べた結果、今回の宝くじの換金期限は6カ月。購入したのは宝くじ売り場だった。その場合、1週間後に受け付けがスタートする。当たりくじと顔写真付の身分証明書と印鑑を銀行に持っていき、さらに手続きがあるため換金するまでは、それから(あと)1週間待たなければならない。ということは、あと2週間、手持ちのお金で乗り切らなければならない。  あ~、こんなとき友達がいてたらなぁーと、今まで仕事と男に時間をついやしすぎた紗綾は心底後悔した。    でも、2週間後が待ち遠しい。ほんとうに夢のようだ。こんなことがあってもいいのだろうか。紗綾は何度も何度も自身の体に痛みを感じさせた。それは、精神を病ませた者がする自傷行為ではなく、嬉しさのあまりに与える痛み。夢ではない、これは現実の世界なんだと実感する痛みだった。  Sサイズのポテト代金を払った残りは2210円。当たりくじのセキュリティも気になるし、今から2週間ご飯も食べないと生きていけない。お風呂にも入りたい。寝るところも欲しい。──これは、ちょっと厳しいかも。でも、この2週間を乗り切れば夢のような超セレブ生活が約束されている。  紗綾は、ワクワクした気持ちを顔に浮かばせて、ふたたび夢を馳せだした。
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