悪魔の子

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「つまり?」菊村がさらに聞いた。すると、「見てくれ」と久米は一同をもう一度パソコンの画面に注視させた。すると、そこに昨日左門寺と幸守が観たドキュメンタリー映像がゆっくり流れている。 「この映像がどうかしたのか?」 「まぁ見てなさいって」 その映像は、ほとんど静止画と言ってもいいほどの速度で流れていて、それを見るのにはかなりの集中力が必要であった。根っからの体育会系で、デスクワークは好きじゃない菊村は、そういった集中力の点に関しては皆無に等しかった。そのため、一人だけ落ち着きがなく、そのことを薫から注意されるほどであった。その時である。「ここ!」と久米は叫ぶように言った。その瞬間、彼はパソコンの画面を指差していた。その時、画面に映し出されたのは、ほんの2秒ほど、ワイングラスにワインが注がれる瞬間であった。それを見た左門寺は、やっぱりな、といった感じでニヤリと微笑む。 「ちょっと待て。これはいったいどういうことだ?」 菊村が驚きながら聞くと、「これが細工だよ」と久米が答えた。 「このDVDの映像には、このワインの映像が所々に刷り込まれてる。普通に再生してる分には正直わからない。何せ秒数で言ったら0.1秒とかの話だからな。だが______」 そこまで久米が話すと、そこからは左門寺が代わって、「人間の潜在的意識にはわかる」と言った。そして、そこからの説明は彼が請け負った。 「この刷り込まれたワインの映像が、観た人の潜在的意識に作用して、その相手にワインを飲みたいという気持ちにさせる。“サブリミナル効果”というやつだよ。その証拠に、この映像を観ている時、僕や幸守くんもワインを飲みたくなりました」 「じゃあ、犯人はこのDVDを観せるだけで毒入りのワインを被害者に飲ませて毒殺したってことか?」
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