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「その通り」幸守の問いかけに左門寺はそう答えた。
「簡単なトリックだ。DVDに細工ができる能力さえあれば、誰だってできる恐ろしいトリックだ」
「それじゃあ先生、このトリックはいったい誰が……?」
菊村がぼやくと、左門寺はこう断言した。
「田丸さんだよ。あの屋敷で小野さんと一緒に暮らしていた彼なら、このトリックを仕掛けることは簡単です。まぁそれだけを言えばあの屋敷で働いていた使用人たちにも可能ですが、彼らには小野さんを殺害する動機がありませんが______」
そこまで説明して、左門寺は俯いて少し考え込む。彼の中で何か引っ掛かる箇所があったらしい。急に黙った彼に注目が集まる。誰もがこの中の誰かが彼に話しかけるのを待っていたのだが、その時左門寺はふと、薫の方に視線を向けて、「小野さんが飲んだワインの中に入っていた毒物というのは?」と左門寺は彼女に聞いた。
「青酸系の毒物です。青酸カリですよ」
「量はどれくらい?」
「致死量は遥かに超えていたそうです」
「なるほど。だとすれば、ワインを飲んでしまったらすぐに症状が出ていたということか……」
「そうなりますね。それがどうかしたんですか?」
唐突に質問され、それらに答えながら、最後に不思議そうに薫は聞いた。すると、左門寺はニヤリと笑う。その顔は、いつものように何かを掴んだ時の悪戯な笑みであった。
「それは何かわかったってことですね?先生」
菊村が嬉しそうに尋ねた。
「えぇ。この一連の事件の全貌の大半はわかりました。あとは、田丸さんが殺害されたあの倉庫の二重密室だけです」
自らを“番犬”と名乗ったかつての“悪魔の子”は、着実に事件の真相に迫っていた。その時の彼は、まるで獲物を捉えたような目をしていた。
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