悪魔の子

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さて______。と、左門寺は息を吐きながら、「菊村警部、もう一度田丸さんが亡くなっていたあの倉庫に行くことってできますか?」と聞いた。残すは田丸殺しのトリックを暴くのみ______。いよいよ大詰めといった感じであった。 「えぇ、できますとも。それじゃあ、表に車回してきましょう」 菊村はそう言って、当然のように部下の薫を走らせた。嫌々であったが、彼女も女子からの指示ということもあって断れない。薫がひと足先に鑑識課のオフィスを出て、廊下を駆けていく。他の三人は、ゆっくりとオフィスを出て、廊下を歩きながら会話を交わしていた。 「先生は、田丸さん殺害のトリックはまったく思い付いてないんですか?」 菊村は不思議に思って聞いた。左門寺のことだから、そっちの方はあらかたわかっているものだと、菊村は勝手に思っていたのである。それに対して、左門寺はこう答えた。 「トリックはまだ。彼を殺したのは恐らく小野さんだと思っています。それはあの倉庫の状況を見ても明らかです」 「明らかなんですか?」 「えぇ。もし、犯人が外部の人間だった場合、わざわざあの倉庫を密室にする必要もない。それに、もし外部の人間が犯人だったら、田丸さんを前から心臓を一突きにして殺すなんてことはできませんよ。恐らく犯人は田丸さんと顔馴染みか、もしくは知り合いで、隙を突かれて殺害された。そして、捜査を撹乱するため、倉庫内を密室にしていった______と考えるべきでしょう」 「なるほど。それで、犯人は?」 「犯人は前から言っているように、恐らく、小野環樹さんだと思っています。彼には田丸さんを殺害する動機がありますし、あの倉庫の特殊な鍵も盗み出すことは可能。これだけ難解なトリックを編み出すだけの頭脳だってありますから」
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