悪魔の子

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「たしかに、彼は第一容疑者として名前が挙げられるかもしれませんけど、彼も殺害されてますよ?」 「だから、僕は最初から言ってるじゃないですか。二人は殺し合ったのだと」 本当にそうなのだろうか______。それはあまり信じたくないことであった。だが、反論したい気持ちでいっぱいである幸守も、左門寺の推理が的確過ぎて言い返す言葉も見つからない。ただ、お互いを憎み合い、こんな殺し合いをしてしまうような二人があんなに面白い作品を書くことができるのだろうか______。幸守は何もかもが納得いかなかった。そんな彼の気持ちを汲み取ったのか、左門寺は幸守にも聞こえるような声の大きさで、「世界一の名探偵、シャーロックホームズだって言っているじゃないか______」と話した。 「不可能な点をすべて省き、残ったもの。それがどんなに奇怪で奇妙なことでも、それが真実なのだと。そのシャーロックホームズは、君が敬愛する名探偵だろ?幸守くん」 最後に左門寺は幸守の方を向き言った。それはシャーロックホームズシリーズの中でも有名な名言である。 それが今だということか______。幸守は目の前にある奇妙な真実を受け入れることにした。そもそも、世界に通用するこの名探偵、左門寺究吾が言っているのだから、恐らくそれが真実なのだ。凡人である自分が何か言ったところで、それに代わる真実なんて求められない。ここで、幸守はその凡人としての才能を発見できた。左門寺のような天才は、自分が求めるものをゼロから作り出したり、探し出すことができるが、凡人である幸守にはそれができない。ただ、ゼロから作り出すことができないだけで、寄せ集めて暴き出されたものを受け入れることはできる。
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