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その屋敷には、もう使用人たちもおらず、いるのは使用人頭の都築だけであった。キッチンへ向かう途中、彼とばったり会った一同は、一緒にそこへ向かうこととなったのだが、その間、幸守がいつまでこの屋敷に留まっているのかと聞くと、彼は「一通りの片付けはしていきたいんですよ。それに他の使用人たちは他の就職先を決めていきましたが、わたくしはまだ決まっておりませんので」と丁寧な口調で答えた。
「あなたほどの人なら、すぐに次が見つかると思ってましたが」
左門寺がそう言うと、都築は彼の方を向いてニコッと笑い、「そう言っていただけると嬉しいです」と言った。
「片付けるって、いったい何を片付けるんですか?」
菊村が続いて聞くと、「田丸様も小野様も、ご家族様がいらっしゃらないので、遺品の整理を。生前より、わたくしが頼まれていましたことなので」と彼は答えた。
「なるほど。じゃあキッチンにも遺品が?」
左門寺が次に聞いた。
「いいえ。キッチンには包丁などの備品もありますが、食品もありますからね。それらも処分しないと」
「なるほど」と、左門寺は納得した。
キッチンは普通の広さではなかった。まるでそこは飲食店の厨房のようで、冷蔵庫も何台もあって、そのどれもが普通の大きさではない。それらを見て一同は驚いていた。
「ここでは、わたくしたち使用人の食事も一緒に作ってましたから広いんですよ。そうなると、冷蔵庫も普通のサイズでは足りないんです」
都築がそう説明すると、それら冷蔵庫を指差して、「冷蔵庫の中に冷凍室はありますか?」と左門寺は聞いた。それに反応して、「調べたかったことって、冷凍庫のことなんですか?先生」と菊村が質問した。だが、彼はそれに答えることなく、都築の答えを待っていた。
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