悪魔の子

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「えぇ。全部ではありませんが______」と、都築は話して、冷凍室がある冷蔵庫をそれぞれ指差した。左門寺は早速その冷蔵庫の中を調べ始めた。夢中になって調べ始める彼に、幸守も菊村も薫も、いったい何を探しているのかと問いかけていたのだが、それにも彼は答えない。必死になって“何か”を探していたのだ。そして、最後の冷蔵庫を開けて、冷凍室の中を調べた結果、左門寺はその“何か”を見つけたらしく、「あった!」と声を上げたのである。 「何があったんですか?」 「もったいぶってないで教えろよ、左門寺」 菊村と幸守が聞くと、左門寺は悪戯な笑みを浮かべて二人の方を見て、「あの密室トリックの“カギ”さ______」と答えた。 「カギって、それ洒落か?」 幸守が呆れた口調で聞くと、左門寺は「まさか。そんなわけないだろ」と冷たくあしらう。 「僕が探していたのは、これさ______」彼はそう言って、見つけたものを一同に見せた。それは、丸い氷を作ることができる“製氷器”であった。一見して、それが何なのかわからなかった菊村は、「それは何だ?」と首をかしげていた。 「製氷器ですよ、警部。ほら、水道水を入れて、冷凍庫で固めたら簡単に氷ができるってやつですよ」 薫が説明すると、「あーッ!でも、それが今回の事件とどんな関係が?」と、まだイマイチ菊村は理解できていない様子であった。 「この製氷器こそ、田丸さん殺しのトリックを解き明かす最大のヒントなんですよ。どうだい?君はもうわかったかな?幸守くん」 左門寺は最後に幸守の方を見て聞いた。「も、もちろんだともさ!」と、彼は強がって言ってみたが、実際のところ、まったくわかっていないのが本音であった。
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