葉月小五郎

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今日もまたいつものように、“平凡”が始まる______。 仕事して、家に帰って、晩御飯を食べて、寝る______。そしてまた明日になって______。 その何気ない毎日の繰り返しは、一見してつまらないものだが、そんな“平凡”こそ素晴らしいと、研斗は自分に言い聞かせていたのであった。 ひょんなことから、研斗は知り合いからマッチングアプリを勧められ、半ば強引にそれをインストールさせられた。登録もしてしまったから、やらないのは少しもったいない気もするし、もしそれで良い出会いがあるならそれも良いと思って、初めてみたものの、思えば最近は仕事ばかりで、ろくに女性と会話なんてしていなかったから、こういう時にどんなことを話せばいいのかわからず混乱してしまう。そのためか、それを登録してから一ヶ月ほどは良い出会いなどはなく、ただ時間だけが過ぎていった。 そんな月日が流れ、研斗は、今日は休みだからと、好きな文学にでも触れようと思い、家の近くにある古本屋に行くことにした。彼はその店を贔屓(ヒイキ)にしていて、そこの店長とも仲が良い。“文学”と格好つけて言ってみたが、彼が読むのは推理小説だけである。たまに恋愛小説や誰かの自伝的小説なども読むが、好んでは読まない。研斗は元々、“謎解き”が得意であったし、好きでもあったから、起きた物事を推理することができる推理小説が性に合っていたのである。今日もそんな面白い推理小説に会えるかななんて期待に胸を膨らませながら、彼は行きつけの古書店に入ったのであった。 店内には、所狭しと本が並べられている。あるものは天井まで届きそうな高さの本棚にギチギチに並べられており、またあるものは、まるで通路を作るように並べられた台の上に無作為に、適当に並べられていた。
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