悪魔の子

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いや、ちょっとではない、だいぶズレている______。心の中でその部分を訂正し、幸守は「まぁ、作家としては面白いですよ。ましてや俺が書いてるのは推理小説だから、左門寺の色々な知識を垣間見れるのは。だから初めて“名探偵”を書くことができたんだし」と話した。 今回、幸守が初めて物語に登場させた“江戸川耕助”という名探偵は、名前などは推理作家の巨匠である“江戸川乱歩”と、横溝正史が創作した名探偵“金田一耕助”の名前から取り、左門寺の探偵としての才能に溢れている箇所と、少しひねくれている性格の部分などを取り入れている。今まで幸守が書いてきた作品には、そういった“名探偵”は登場してこなかったから、左門寺の存在がこの“名探偵”が生まれた一因になっていることは間違いなかった。 夕食の時間となり、波戸が下から料理を運んでくる。突然の来客であったが、それはいつもより豪華であった。それらを運びながら、「まったく。お客さんが来るなら来るで前もって連楽してくださいね先生」と波戸は言って、来客に「先生の弟さんでしたね?ゆっくりして行ってくださいね」と、波戸は研斗の方を見て言った。 「はい。ありがとうございます。この料理は全部お一人で作られたんですか?」 「えぇそうよ。私しか作れる人いないもの。この先生方は料理に関してはてんでダメなんですよ。目玉焼きだって作れないんですから」 それを聞き、料理上手な研斗はクスッと笑う。 「兄さんは頭で解決できないことは苦手ですからね。昔からそうでしたから」 「もう昔話はよそう。さて、食事にしよう______」本人からは聞けなかった左門寺究吾の“昔”が聞けて、幸守は新しい知識を得ているようであった。
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