悪魔の子

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幸守は左門寺をじっと見つめた。そんな彼はゆっくりと窓の方へ向かい、「たしかに、喜びはしなかったな」と答えた。 「教えてくれ。お前らはいったい何者なんだ?あの人は本当にお前の弟なのか?お前と異常犯罪の繋がりって何なんだ?」 幸守がそう聞くと、左門寺は向いていた窓の方からゆっくりと彼の方を振り返り、「君のことだから、ある程度は予想できているんじゃないのか?」と、まるで彼の心の中を見透かしているかのように聞いた。たしかに、幸守はある程度のことは推理していた。だからその答え合わせをしたかった。彼がそのことを正直に話すと、左門寺は「それなら、話してやろう______」と言って始めた。 「前にも、話したことがあるだろう。僕が殺したいと思った相手について______」 「お父さんなんだろ?実の」 「あぁ。僕は、本気で父を殺したかった。だからといって、実際に殺したわけじゃない。そんなことをしたら、今の僕はいないからね。そして、なぜ僕が自分の家族である父にそう思ってしまったのか。それが僕と異常犯罪を結びつけたひとつの要因になっている______」 次に左門寺の口から放たれた言葉は、幸守から声を失わせるほどの衝撃を与えた。 「父は、異常犯罪者なんだよ。たぶん、君もよく知ってる______」 口をあんぐりと開けたまま、幸守は暖炉の前で突っ立っていることしかできなかった。もはや彼は思考もすっかり停止してしまっていた。左門寺はそんな彼を見つめながら、「僕の父は、“外科医”だ______」と言った。その名前を聞き、幸守は至極驚いた。それはまた言葉を失ってしまうほどであった。 ここで言う、“外科医”というのは、20年前に逮捕されたこの町では有名な連続快楽殺人鬼の異名である。その本名は、『真壁(マカベ)京治(キョウジ)』。実際に市内の総合病院で外科医として働く男であった。その男が左門寺の父親なのだという。
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