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「あいつ本当に来るかな。お前の手紙を読んだのかな」
タカオがぐちぐち言っている。
「まあ、来るんじゃないか」と言いながらもフウタも半ば疑っている。
「大丈夫。カズオは来るよ」と私は口の中でつぶやいたが他の二人は気が付いていない。結局、私はカズオに手紙を書いた。来週の土曜日の正午にあのデパートの屋上に来てよ、その日は私の誕生日だから、タカオとフウタも来るから、カズオも祝いに来てよ、そして四人で記念写真を撮ろうと、手紙にはそう書いた。土曜日のデパートの屋上はよく晴れていた。タカオとフウタには学校で手紙に書いた内容を伝えた。二人はなんでお前の誕生日で写真なんて撮らないといけないんだよと文句を言っていたが、そんなことは関係ない。どうしても四人で集まるんだと、私の意思は固かった。約束まであと十分か。私は自動販売機でブラックのコーヒーを二本買った。
「タカオとフウタもなんか飲み物を買っておいてよ。私の誕生日なんだから」
なんじゃそれーと言いつつも二人が自動販売機まで向かうのを見て私は視線をデパートの屋上に向けた。まだカズオは来ない。再びベンチに戻り腕時計を見ると、もう正午になっていた。そして、デパートの屋上のドアがガチャリと開く。照り付ける陽光が逆行となり、ドアから入ってくる人影の顔はよく見えない。目が慣れてきて、やっとわかった。タカオとフウタはまだ気づいていない。
「久しぶり。今日は私の誕生日に来てくれてありとう」
そう言って私はカズオにいつもの缶コーヒーを渡した
「よう。久しぶりだな。元気だったか?」カズオは缶コーヒーを受け取ると別の手で私の手を握った。
「あいかわらずやらけーな。お前の手」カズオは下を向いてそう言った。私もうつ向いたまま黙り込んだ。ただ、目がにじんで来たので、これはいかんと気を引き締めた。
「カズオ。久しぶりだなー」という二人の声が聞こえてきたので、涙はひっこめた。もういつもの四人に戻っている。カズオがこの四人の「カナメ」なのは間違いないのだ。
「みんな、ベンチに座って。飲み物は持った?それでは久しぶりに集まった四人と私の新しい誕生日を祝して、乾杯!」
各々が手に持った飲み物を天に掲げる。隣に座っている数を盗み見ると、カズオもうれしそうな顔をして笑っている。
「誕生日おめでとう」「ありがとう」
屋上の端のフェンスに寄りかかってあの女性が立ってこちらを見ていたので、私は大きく手を振った。
「写真を撮ってくださーい。私の新しい誕生日の記念写真なんです」
立っていたその女性は私の声に気が付いたようでは早歩きで私の傍に立つと、やっと会えたみたいだなとにやりと笑い、私が手渡したカメラを受け取った。
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