おそろいの抹茶ラテ(旧)

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 並んで眺める金星が、遠くから私たちを見下ろしている。もう、二人の時間が終わっていく。 「オレ、高校の時、平岡のこと好きだったよ」  息を呑んだ。動揺を隠せない自分がいた。神垣くんの震える声に胸が熱くなる。私のスキルがゼロになる。 「私も、神垣くんのこと好きだったよ」  一瞬驚いたような顔をしたけど、じんわりと柔らかい笑顔になる。私が好きだった神垣くんだ。  私たちはどの時点で選択を間違えたのか。想いあっていた二人は、どこかで結ばれることができたのだろうか。今更何を思っても、過去は戻ってこないんだけど。  分かっている。悪いのは逃げた私。自業自得なんだ。  未熟が故に選んでしまった道も、全て「青春」という言葉に置き換えられる。私はその時の痛みをずっと忘れられずにいた。 「お幸せにね」  さようなら、大好きだった神垣くん。私の「青春」の痛みを今、払拭するから。 「ありがとう、平岡もな」  さようなら、大切な人がいる神垣くん。私は気持ちを伝えたから、もう大丈夫。 「平岡、またね」 「またね」  私たちは笑顔で別れた。青くさい記憶は、いつの間にか懐かしい思い出へと変化している。抹茶ラテの粉っぽさが、まだ甘くほろ苦く口の中でざらついている。  週末、私は何しよう。一番星を眺めながら、頬を伝う涙をこっそり拭いた。
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