1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここがあいつの家か。ずいぶんと立派な家に住んでいるのね」
目の前にあるのは、三階建ての洋風豪邸。フェンスには薔薇が絡み付いているけど、残念ながら開花はまだのようだ。
普段、シンプルで安そうな、しかも薄ら汚れた服を着ているあいつの家とは、とても思えない。それだけ、目の前にある家は豪華だった。
「はっ」
もしかしたら、家を間違えているかもしれない。
表札を見てみる。
やっぱり、間違えていた。
「あれ? あの歯医者の所から少し歩けば、あいつの家に着くはず……」
馬鹿な! そう思い、スマホをバッグから取り出し、地図アプリを開く。
「うそ!」
愕然とした。
地図アプリによると、私は別の場所にいることになっているのだ。
信じられないので、今来た道を戻ってみる。
あるはずの歯医者がない。代わりにあるのは、何の変哲もない一軒家だ。
地図アプリを見ると、ここを北に向かって歩き、左右に道が見えたら右に曲がると、私が先程歩いていた所に出る。そこからまっすぐ歩き、歯医者の所を左に曲がれば……
「どうしてこんなことが……」
あまりにも奇妙なことだったので、考え込みそうになったが、悩んでいても仕方ないので、気を取り直してこのまま進むことにした。
最初のコメントを投稿しよう!