勇者の再出発

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 勇者の内田は魔王を倒した後、仕事がなくなり無職になってしまった。  そこで、バイトの面接に行くことにした。  当日、内田は勇者らしく堂々とした雰囲気を醸し出し、面接に臨んだ。 「では、お名前、それと簡単にでいいので職歴を教えてください」と面接官が言う。 「勇者の内田ユウシと申します。職歴は、魔王を倒して世界を救ったことがあります!」 「す、すげぇなー! ……あっ! いや……実に興味深い職歴をお持ちですね」  面接官は思わず素が出てしまったが、すぐにプロフェッショナルな態度を取り戻し、キリッとした表情で「いくら勇者でも一般の方と同じくフェアに選考を行いますからね!」という気持ちを忘れないように努めた。 「では、仕事内容について確認を致します。この宝石店の警備員をしてもらいます。お客様からの注文品を管理しながら、悪い人たちが来ないか目を見張って盗難防止を行っていただきます。魔王を倒した勇者の方なら、宝石を管理することぐらい容易い......」 「はい! 実に容易いです!」  内田は、食いぎみに自信を持って答えた。 「でしょうねぇ......あっ! そうだ! これは絶対に聞いておかないと! ......念のために聞かせてくださいね。魔王を倒す旅の中で盗賊と戦った経験はありますか?」 「五百回程度あります! 盗賊を倒すのが一番得意でした!」  本当は三十回ぐらいであったが、どうしても採用されたかった内田は後でバレないことを天に祈りながら、大いに盛って答えた。 「す、すげぇなー! ……あっ! いや……実に興味深い経験をお持ちですね」  面接官は、またしても素が出てしまったが、すぐにプロフェッショナルな態度を取り戻し、キリッとした表情で「いくら勇者でも一般の方と同じくフェアに選考を行いますからね!」という気持ちを忘れないように努めた。 「それでは、面接は終了です。後日、結果をお知らせします」  内田は、面接官からの返答を待つことにした。
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