勇者の再出発

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 順調に仕事を続けていたある日のこと、夜の一人でのバイト中に五人の盗賊グループが現れた。 「店にある金と宝石を全部出せ! すぐに出せ! 一分以内に出せ!」と盗賊のリーダーらしき人が大きな刃物をチラつかせながら内田を脅す。 「ふん! 悪人どもめ! この勇者内田が、武器も魔法も使わずに指一本で瞬殺してやるぜ! 五人まとめてかかってきな!」  と言いたかったのだが、魔王を倒してからブランクが長かった内田は、ろくに運動もせずに怠惰な生活を続けていたため、体がなまりすぎて、とても戦える状態ではなかった。  くそう! 健康的な食習慣、運動習慣を疎かにしていた痛恨のミスだ! と内田は心の中で嘆く。 「ほら! あと二十秒だぞ! さっさと出せよ!」と盗賊のリーダーらしき人が大きな刃物をブンブンと振り回しながら内田を脅す。  内田が絶望したその時、「ん? 何か悪いエネルギーを感じるぞ」と、パトロール中の警察官が店のドアを勢いよく開けた。 「お前……け……警察官だな!?」と盗賊のリーダーらしき人が大きな刃物を落として狼狽える。  他の盗賊たちは口を開けてポカーンとしている。 「ああ! 格好を見ればわかるだろ?」  と警察官は笑みを浮かべた。  そして、「ふんー! ふんー! ふんー!」と叫びながら、警察官は猛スピードで一発ずつパンチをくらわせ盗賊たちを気絶させた。 「君、大丈夫かい?」と警察官が内田に近づく。 「はい、お陰様で……あっ! お前は! えっ? 嘘だろ!?」と警察官の顔を近くで見た内田は驚いた。
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