1709人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなっ…。
そんな馬鹿なことってあるの?
ここまで頑張ってきたのに…もう、大丈夫だと安心していたのに。
ぼんやりしたまま病院を出た私は、2年前と同じく足取りがおぼつかない。
だって私はまだ32歳。
それなのに、2度も病を患わないといけないのか?
とりあえず、医師は抗がん剤治療と放射線治療を行うという。
それを思うだけで、吐き気が込み上げてきた。
これまで言う通りにしてきた主治医にさえ、怒りを覚える。
セカンドオピニオンも考えたが、すぐに全ての考えがぼんやりしていく。
あまりのショックと悲しみに、押し潰されそうだ。
なんとか重い体を引きずって車に乗ったが、ハンドルを抱えるようにして、まったく動けない。
今、エンジンをかけて走らせたら間違いなく事故をするだろう。
あぁ、死んでもいいのか。
どうせ死ぬんだったら、あんな苦しい治療をすることなく、いっそひと思いに──。
スマホが私を引き止めるように、悲鳴を上げて震えた。
『夫』と表示されたそれに、激しく縋る。
『──もしもし?香澄?検診どうだった?問題ない?』
「…浩二さんっ」
『香澄?どうした?何かあったのか?香澄っ?』
夫の浩二の優しい声が、私を暗闇から救い出す。
あの時、私に手を差し伸べてくれたように。
最初のコメントを投稿しよう!