【私の余命はあと…】

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「うん、うまくできた」 雲のようなメレンゲを眺めて、ひとりで悦に浸る。 少し腕が痺れたが、夢中になってかき混ぜていると何も考えなくていい。 頭に浮かぶのは、夫の驚いた顔。 そしてすぐに、パッと表情を輝かせて喜ぶに違いない。 私より6つ年上の38歳だが、未だに子どもっぽいもころがある。 そろそろ起こす時間かな? 寝室をノックして夫である永瀬浩二に声を掛けたが、いびきは更に音を増す。結婚前はいびきをかかないと言ってたのに…これだけは詐称だといってもいい。 ベッドに腰を下ろし、しばらく寝顔を見つめた。 それ以外は、本当に理想の夫だ。 やや彫りの深い顔立ちは俳優みたいだし、背も高くて体格もよく、隣にいると守られている安心感がある。 そして何より、とても優しい。 誰に対してもというより、特に妻である私に優しかった。 その愛には枠がなく、底を知らず、いつどんな時も包み込んでくれるんだ。 「浩二さん、起きて」 「んっ…もうそんな時間?」 「特別な朝ごはん作ったから」 「なんか、出汁の匂いがする」 「食べたいって言ってたやつ、作ってみたから」 そう言い残してリビングに戻る。 ああ見えて、意外と寝起きはいい。 寝ぼけ眼をこすりながらやってきた夫の顔が、予想通りに驚く。
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