【全部、あの子の為】

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抗がん剤治療が終わると、最初に迎えにきてくれたのは、抱えきれないほどの花束を抱えた永瀬浩二だった。 「お疲れさま。いっぱいいっぱい、君と話がしたい」 「…私も」 それは、心からの思い。 もし願いが叶うのなら、この人と一緒に過ごしたい。 この人さえ居てくれたら、私は必ず病魔に打ち勝つことができる。 そんな気持ちが伝わったのか、まだ闘病中だというのに、浩二からのプロポーズを受けることにした。 「良かったじゃない!」 細やかな結婚式は、私により生きる力を与えてくれたんだ。 「和美、ありがとう」 「幸せになりなさいよ、絶対に」 「うん。全部、和美のお陰」 「そうよ、私のお陰なのよ。だからね、お返しにずっと元気でいてね」 「和美…」 二人でしっかりと抱き合う。 親友の温かさは、体だけじゃなく心まで染み渡っていく。 私がこうして生涯の伴侶に出会ったのも、病気に負けなかったのも、全てはこの落合和美が居てくれたからだ。 病気で心が弱った人たちを力づけ、元気にしたい。 そんな理由で看護士になった和美は、持ち前の明るさで沢山の患者を救っているはず。輝くような笑顔 は、見ているほうの心を元気づけてくれる。 何かあれば、すぐに私は和美を頼っていた。 だから今回も、親友をカフェに呼び出す。 一人で抱えるには、あまりに重たくて…。
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