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「お姉ちゃん!」
病室に飛び込んできた明里は、私がベッドの上から微笑むと、力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
「心配かけてごめんね。でも大したことないから」
「なんだ、病院に担ぎ込まれたっていうから、私てっきり…」
「ただ足を踏み外しただけって言ったでしょ?骨折もしてなかった。でも渡したいものがあったから、連絡してもらったのよ」
「そういえば、アイツは?」
明里が言う『アイツ』は、浩二のことだ。
「今、会計してもらってる。それよりはい、これお守り」
「お守り?」
「恋愛成就よ。彼とたくさん幸せになってね」
「お姉ちゃん…」
お守りを手渡し、そのまま姉妹で抱き合う。
明里の温もりが、私の凍てついた心を溶かしてくれる。
「明里、お願いがあるの」
「お願い?なに?」
「今日、泊まってくれない?骨折はしてないけど、腕が痛むの。途中で手すりを掴んだから、そのまま転げ落ちなくて済んだけど、家のこと出来ないから」
「いいよ、分かった。何日でも泊まってあげる」
「ありがとう、助かるわ」
お礼を言った時、ちょうど会計を済ませた浩二が戻ってきた。
「明里ちゃん…」
「どうも」と、明里は素っ気ない。
「今日は泊まってもらうわ」
「いや、俺が介抱するからいいよ。明里ちゃんは仕事もあるから──」
「もう決めたからっ」
私は浩二を遮った。
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