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「ねぇ、お姉ちゃん」
「ん?」
「何かあった?なんだか、元気がない気がする」
同じベッドに入っている明里は、やっぱり私の妹なんだ。
姉の心の動揺に、気づいている。
けれど、この子に打ち明けるわけにはいかない。
「ちょっと色々と考えて疲れたのかも。でも、明里が隣に居てくれるから大丈夫」
「そう?ならいいけど」
安心したのか、しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。
私は眠ることができず、暗がりの中で天井を見つめる。
目が冴えているのは、まざまざと蘇ってくるからか?
階段を踏み外して、勢いよく転落していく場面が。
振り払うようにぎゅっと目を閉じてから、そろりとベッドから抜け出す。
緊張したからか、喉が乾いてしまった。
静まり返ったキッチンで冷たい水を飲んでいると、突然──。
「怪我、大したことなくて良かったな」
思わず悲鳴を上げそうになり、コップを落としてしまう。
粉々に砕けた破片を「俺がやる」と、いち早く掃除する浩二。
「…ごめんなさい」
「いいよ、ここはやっておくから。香澄は先に休んで」
怪我をした妻を気遣う、優しい夫。
あの時だって『大丈夫か!?』と、階段を駆け降りてきた。
けれど、私は知っている。
この人が、私を突き落とそうとしたことを。
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