【サレ妻は見殺しに】

6/14
1621人が本棚に入れています
本棚に追加
/408ページ
「あの人が私に死んで欲しいと願ってるのは知ってた。でもまさか…殺そうとするなんて。怒りよりも先に、虚しさが込み上げてきて。私は一体、なに?」 優希に問いかけても仕方がないと分かっているが、問いかけずにはいられなかった。 「私のこと、そこまで憎いの?殺したいくらい憎たらしいの?私が何をしたの?あの人に、あの人たちに、私が一体何をしたっていうのよ?勝手に近づいてきて騙して結婚して、それで死なないから殺そうとするの?私って、なんのために存在してるの?」 怒りによって蓋をしていた、根本的な問いかけ。 それが、ダムが崩壊したように襲ってくる。 自分が消えてしまいそうで、とても怖い。 虚しさに押し潰されて、このまま無くなってしまいそうで…。 「香澄…」 答えを探そうとしてくれているのか、ゆっくりと座り直した優希でさえ、今の私には信用ができない。 優希は、亡き妹のために復讐を誓った。 同じ境遇で苦しんでいた私に近づき、共に憎き奴らを陥れようと共闘していたが、優希にとっても私は利用価値がある道具に過ぎないんじゃないのか? あいつらが私を『金のなる木』だといって、偽の愛情を与え続けたように、この人にとっても私の存在なんて無いに等しいのでは? 私は、愛を与えられる資格すら──。
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!