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「おっ…おおっ!」
思った通りの笑顔が見れて、こっちまで嬉しくなる。
「ネギトロ丼!?しかもこれって、メレンゲ?」
「そう、雲みたいに見えない?前にお出汁のカフェに行った時、売り切れてて食べられなかったでしょ?頑張って再現してみた」
「何時から起きてたの?」
「ちょっと早く起きただけよ」
わずかな動揺を、笑って誤魔化す。
なんだか眠れなかったからと答えて、心配されたくない。
「食べるの勿体ないくらいだなぁ」
そんなことを言いながら、メレンゲと黄身を混ぜて豪快にかっ込む。
「うん、美味い!」
「良かった」
「香澄、カフェできるよ!」
「そんな甘くないでしょ?」
「俺、ソッコーで仕事を辞めるから」
「なに言ってるのよ。頼りにされてるでしょ、課長さん」
浩二は電子機器メーカーの営業職で、今は課長の座に就いている。
人当たりがいいから成績も良いそうで、私がパート勤めでいられるのは、そんな夫のお陰だ。
体調に波があるので、正規社員の仕事は避けて輸入雑貨のお店で働いていた。
「でも将来、ホントに香澄とカフェやるのもいいな」
「会社を定年になってからってこと?」
「いや、お金を貯めてさ2人でやるんだよ。どっか古民家をリフォームして、料理は香澄が作って俺が珈琲を淹れる。居心地が良くて、お洒落な感じの」
「それ、本気?」
尋ねてみたものの、私の頭にもすぐに浮かんでくる。
私たち夫婦の、未来の形が。
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