【私の余命はあと…】

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──えっ? 今、転移したって言った? 聞き間違いじゃ…? だってこの画像には、なにも変わったところなんか…。 「肺に転移をしています」 「あぁ…」 やっぱり、聞き間違いじゃなかったんだ。 ただの、定期検診のはずなのに…。 いつもと変わらない、ちょっとしたイベントに過ぎない。 いつものように血液検査をし、いつものようにCTを撮って、いつものように主治医から「異常はない」とお墨付きを貰い、次回の予約を決めるためにいつのもように手帳を開く──。 幾度となく繰り返す、いわばルーティンのようなもの。 つまり、変わり映えしないけれど、予期せぬことも起こらない。 だから私は、安心し切っていた。 もうあの『地獄』を繰り返すことはないのだと…。 ううん、そうじゃない。 そうじゃない。 そう言い聞かせていただけ。平常心で、普段と変わらないようにって。 それでも夜明けとともに目が覚めたんだ。 なにかをしていないと、叫び出してしまいそうだった。 もし、もし万が一、転移でもしていたらどうしよう? 地獄に引き戻されるのだけは、勘弁してほしい。 そうじゃないなら、何でもするから…。 お願いします。 どうか、どうかそんなことがありませんようにって。 ずっと祈っていた。 ずっと。
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